眠ってた衝動
急に電話があった
Xが来る
一人で来る
私が一人でいるこの家に
今日は体調を崩して寝込んでいるのに
私は服を着替えて
Xに渡さなきゃならないものを
紙袋に入れた
その紙袋を持って
玄関とリビングを行ったり来たりしていた
あと4時間
約束の時間まで
「出かけてしまうから、玄関のドアの取っ手に下げておくから」
そう言って電話してみることを思いつく
居留守を使って
家の中にじっと潜んで耳をそばだてている
自分の姿がうかぶ
嫌になった
そんなのは嫌だと思った
あと3時間
電話が鳴った
「少し早くいけるようになったから、今から出るみたいだから」
姉からだった
Xが車に乗って
こっちに向かってくる姿を想像した
紙袋を持って
…でもまた置いた
あと30分くらい?
鏡を見た
服を整えた
髪を整えて
「隙」というものがなんだかわからないけど
そんなもののかけらも見つけられないように
駄目だ
昨日からの嘔吐と痛みで
私の顔ときたら
凛とした表情とはほど遠い
隙だらけの
哀れな病人の表情
また紙袋を持って
玄関に向かう
リビングに引き返し
クリップを持って
また向かう
玄関の戸を開けて
外側の取っ手に紙袋を下げた
そして風でとばされないように
クリップでとめた
玄関の鍵を閉めた
そのとき
今日これから
またあの時と同じことを繰り返して
今度こそ立ち直れないほど
こてんぱんに自分をたたきのめしてしまいたいと
一瞬思った
そして次の瞬間我に返ったとき
その破壊衝動が
まだ私のどこかに残っていたことに驚いた
自分を恐ろしいと感じた
そうして
哀れだと思った
可愛そうに
と思った
自分を守りたくてこんなに怯えて
なのに
自分を傷つけたくてこんな衝動に駆られて
でも大丈夫
私はそんなものには負けないから
Xが来る
一人で来る
私が一人でいるこの家に
今日は体調を崩して寝込んでいるのに
私は服を着替えて
Xに渡さなきゃならないものを
紙袋に入れた
その紙袋を持って
玄関とリビングを行ったり来たりしていた
あと4時間
約束の時間まで
「出かけてしまうから、玄関のドアの取っ手に下げておくから」
そう言って電話してみることを思いつく
居留守を使って
家の中にじっと潜んで耳をそばだてている
自分の姿がうかぶ
嫌になった
そんなのは嫌だと思った
あと3時間
電話が鳴った
「少し早くいけるようになったから、今から出るみたいだから」
姉からだった
Xが車に乗って
こっちに向かってくる姿を想像した
紙袋を持って
…でもまた置いた
あと30分くらい?
鏡を見た
服を整えた
髪を整えて
「隙」というものがなんだかわからないけど
そんなもののかけらも見つけられないように
駄目だ
昨日からの嘔吐と痛みで
私の顔ときたら
凛とした表情とはほど遠い
隙だらけの
哀れな病人の表情
また紙袋を持って
玄関に向かう
リビングに引き返し
クリップを持って
また向かう
玄関の戸を開けて
外側の取っ手に紙袋を下げた
そして風でとばされないように
クリップでとめた
玄関の鍵を閉めた
そのとき
今日これから
またあの時と同じことを繰り返して
今度こそ立ち直れないほど
こてんぱんに自分をたたきのめしてしまいたいと
一瞬思った
そして次の瞬間我に返ったとき
その破壊衝動が
まだ私のどこかに残っていたことに驚いた
自分を恐ろしいと感じた
そうして
哀れだと思った
可愛そうに
と思った
自分を守りたくてこんなに怯えて
なのに
自分を傷つけたくてこんな衝動に駆られて
でも大丈夫
私はそんなものには負けないから
THEME:近親者による性虐待からの快復 | GENRE:心と身体 |